マツモトキヨシ

チェーンストア

マツモトキヨシとローソンの提携は何を意味するのか

「マツモトキヨシとローソンの提携は何を意味するのか」

2009年8月

ドラッグストア最大手のマツモトキヨシとコンビニ2位のローソンの提携が、いよいよ公式発表に なりました。水面下では、かねてより交渉が続けられていたのですが、これで正式にスタートを切 ることになったのです。セブン&アイとアインファーマシーの提携に続き、ドラッグストア業界で の異業態との大型提携となります。ドラッグストアとコンビニの提携では、グローウェルホールデ ィングも同じイオングループのミニストップと、すでに新業態店を開始しており、今後はドラッグ ストアとコンビニの両者で開発する新業態同士の戦いのステージを迎えることになります。

マツモトキヨシの売上高は3900億円、店舗数は970店舗です。それに対し、ローソンの売上 高は1兆5600億円、店舗数は9500店ですので、両者を合わせるとかなりの規模になります。 当面の業務提携の内容は、今年中に共同出資会社を作り、新業態店を開発します。その新会社で、 5年間で500店舗を出店します。商品の共同開発や相互供給もします。11年後の2020年に はローソン500店舗で薬販売をするというものです。新会社を設立して、新業態店舗を開発し出 店するという点では、セブン&アイとアインファーマシーの場合と類似しています。

改正薬事法の施行により、さまざまな展開が予測されていましたが、ある意味では、予想通りの展 開ということができます。改正薬事法の施行により、それまで覆い隠されてきたドラッグストアの 問題点が表面化して、新たな戦いのステージに進まざるをえない状況にあったからです。その最大 の課題は、食品や雑貨を低価格で販売して集客を図り、医薬品や化粧品で荒利を確保するという単 純なビジネスモデルが行き詰っていたことです。特に、マツモトキヨシは、立地選定と広告費を大 量につぎ込んだCI戦略により、実績を伸ばしてきた側面が強く、必ずしも独自路線で次のステー ジの展望が開ける状況ではなかったのです。

マツモトキヨシが主戦場とする都心部、特に首都圏はオーバーストアとなり、立地の良さとCI戦 略だけでは、はっきりいって今後勝ち残ることは困難です。特に、立地はよいが、小型店舗が多い 経営は、競争力に劣るだけではなく、人を極端に減らすことはできないし、棚割の標準化もできず、 経営効率の悪さも否めないのです。ドラッグストアの次のステージの本流の1つは調剤併設である とする見方が多いです。この方向性では、マツモトキヨシは日本調剤と提携はしたものの、先行す るスギホールディングスやグローウエルホールディングスに大きく遅れを取っています。そして、 都心部以外の郊外店舗で集客する力も決して強いとはいえないのです。

マツモトキヨシとローソンの業務提携は、このような行き詰った状況を打破できるのでしょうか。 大きなメリットとしては、MKカスターマーなど、マツモトキヨシの得意なPB商品の販路拡大と いう点があげられます。PBはボリューム勝負の面があり、これでイオングループやセブン&アイ グループと互角に戦えることになります。また、ローソンのチェーンオペレーションノウハウを学 べることも大きなメリットです。しかし、970店舗ある既存店の活性化は自力でやっていかなけ ればなりません。確かに、弁当などコンビニ商材を導入することにより、多少は有利になるかもし れませんが、これだけではドラッグストア活性化の根本的な解決策にはなりません。業務提携は華 々しいのですが、ドラッグストアとして独自の強い企業体質を確立していかなければ、結局は商社 を中心とする大資本に飲み込まれていきます。マツモトキヨシ独自のこれからの展開に期待したい と思います。

-チェーンストア