「世界ランキング上位企業が成長維持を図る3つの戦略」
2008年10月
英国の調査会社プラネット・リテール社が集計した、世界の食品・雑貨小売チェーンランキング (2007年)を見ると、1位のウォルマート・ストアーズ(395,305百万ドル)、2位の カルフール(142,229百万ドル)の順位は昨年と変わらず、3位のテスコと4位のメトロの 順位が入れ替わるという結果になっています。
これらの売上高上位の企業は、本国では圧倒的にシェアが高いために、飽和状態に近づいており、 従来のままの路線では成長が鈍化することは必然です。そのために、主に3つの戦略を取ることで、 成長維持を図っています。1つは海外出店であり、もう1つはラインロビング、そして新業態開発 です。
海外出店では、ウォルマートは中国やブラジルで売上を伸ばしており、4位から3位に順位をあげた テスコは、韓国、タイ、ハンガリーなどに進出しています。特に、テスコは海外進出に意欲的で、 同社の売上高全体に占める海外売上の構成比は、4分の1を上回りました。
ラインロビングという面でも、最も積極果敢なのは、ウォルマートであり、カテゴリーキラーで 成功している分野を次ぎから次へと飲み込んで成長を図ってきました。新たに取り組んでいるのは、 オフィスサービスの分野で、テキサス州ヒューストンに「サムズクラブ・ビジネスセンター」という 実験店を開設しました。これは、事業者向けのコピーや製本サービスなどを提供するもので、フェデ ックス・オフィス(旧社名フェデックス・キンコーズ)などのマーケットを奪おうという試みです。
新業態開発では、ウォルマートはアリゾナ州フェニックスに、「マーケットサイド」という小型店を 開店します。持ち帰り総菜や半加工食品を主体とした品揃えで、地元産の食品や調理方法に関する 専門知識を持った店員が、質の高い接客をするという、従来のウォルマートとは、まったく異なる フォーマットです。
日本の小売チェーンでは、世界の売上高ランキングの5位にセブン&アイ、7位にイオンが入って います。海外出店では、いずれも今後の出店の軸足を中国に向けています。ラインロビングでは、 両者とも成長を続けるドラッグストアマーケットを奪取しようと布石を打っています。また、セブン &アイは、ザ・プライスという食品ディスカウントの新業態店を開発しました。日本の小売チェーンも、 すべての面で、世界の小売チェーンの戦略と足並みを揃えています。