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激動の時代にはバイヤー研修の重要性が高まる

「激動の時代にはバイヤー研修の重要性が高まる」

2009年2月

リテールビジネスの基本として、「利は元にある」という言葉があります。景気低迷が続く状況に おいて、小売チェーンが急速にディスカウント志向に舵を切る中で、この言葉の重みが一段と増して きております。その証拠に、当社に対しましても研修部門では、従来は店長研修のご依頼が件数と しては圧倒的に多かったのですが、最近ではバイヤー研修のニーズがにわかに高まってきており ます。実際に小売チェーンの店頭を分析してみると、店長やスーパーバイザーの責任というよりも、 バイヤーに問題があるのではないかという課題が数多く発見されることが分かります。

特にドラッグストアやホームセンターなど、比較的、歴史の浅い業態では、率直に申し上げて、ごく 一部の先進的な企業を除いて、大半の企業では、体系的かつ実践的なバイヤー研修を受けていない人が あまりにも多いことに驚かされます。確固たる商品戦略が確立していないまま、先輩バイヤーがやって いたことを見よう見まねで受け継いでいるだけの仕事をしているのです。これまで、あまり波風が立たず、 緩やかな競争条件の中で同質競争を繰り広げている間は、これでも企業が回っていたのですが、今と なっては、この事のほうが不思議に思われます。もはや昨日と同じことをやっていれば今日が過ごせて、 明日に続くというような悠長な時代ではないのです。

バイヤーの動向を見ていると、あまりにも物事を短絡的に捉えすぎるのではないかと感じざるをえません。 例えば、価格戦略を強化しろと言われると、、仕入条件ばかりに目がいって、結果的に安物商品を羅列する 売場を作ってしまいます。その逆に、荒利を高めろと言われると、今度は誰も買いそうもない付加価値が 高いと称する商品を数多く売場に導入します。在庫を圧縮せよと言われれば、売れる商品も売れない商品も すべてまとめて在庫を減らしてしまい、その結果として欠品が多い売場にしてしまいます。要するに、経営者 から言われたことを短絡的に捉えて、常に目先の問題ばかりを追いかけているから、このような結果になって しまうのです。

激動の時代であるほど、原点に帰ることが大切です。当社のバイヤー研修は12回コースで実施している のですが、最初の3回くらいは基本理論が中心で回りくどいように感じるようです。事実、課題を出しても 完全にこなせず、不十分な結果に終わることが多いです。しかし、それを我慢して4回、5回くらいになり、 ある程度、バイヤーが本来やるべき仕事が理解できてくると、実践課題できちんと成果をあげられるように なってきます。研修に参加しているバイヤーの大半が、課題として選んだカテゴリーの改善において、売上高と 荒利益を大幅に伸ばして、しかも在庫を削減するという結果を出すようになります。この段階ではまだ部分的な 取り組みに過ぎないのですが、自信がついてきたことがはっきりと分かります。

そして回を重ねて、複数のカテゴリーで成功事例を創れるようになると、バイヤーとしての本当の実力が高 まってくるのです。こうなると仕事も面白くなってくるようで、あえて促さなくても、売場づくりのいろいろ なアイデアが自発的に出てくるようになります。最初の頃は、ディスクワークが増えたと経営者からお叱りを 受けることもあるのですが、この段階になるとデータ分析や改善策の作成もスピードアップできるようになり、 むしろ売場を見ることの重要性も認識するようになります。そして、もう1つ、自らが構想した売場をつくる ために、新たな取引先の開拓の必要性も認識して、真剣に取り組むようになります。

日本の小売チェーンは、必ずしも店舗の標準化ができておらず、それゆえに店長やスーパーバイザーの応用 能力が重要になります。それは正しいのですが、やはり元となるバイヤーの能力が高くなければ、質の高い 売場ができないことも確かです。経営者の意志を現場で実現しようと思ったら、まずバイヤーにきちんとした 教育の機会を与えて、バイヤーから変えていくことが重要ではないでしょうか。実際に数多い研修の中でも バイヤー研修が、最も速く企業の業績アップを実現するという結果が出ています。

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