「消費者のコストパフォーマンスを高めた企業が勝ち残る」
2009年7月
久しぶりに避暑を兼ねて、家族と那須に行ってきました。その折に、那須ガーデンアウトレットに 立ち寄ったのですが、そこでいろいろと面白い光景を目にしました。このアウトレットは、那須と いう土地柄のために、観光客、別荘滞在者、地元住人などが混在して訪れているのが特徴です。 まず驚いたのが、来店客の多さです。景気低迷が続く厳しい財布事情も何のその、来店客の大半は ブランド名の入った大きな買い物袋を手にして歩いています。特定ブランドに狙いを定めてきた客 が多いせいかもしれませんが、高額なバッグなども、どんどん売れていて、消費者の価格志向に対 応したアウトレットの強さを、まざまざと見せつけられた思いがしました。
改めて感じることは、消費者が求めているのは、コストパフォーマンスの高い商品なのだという ことです。安かろう悪かろうでもなく、高かろう良かろうでもなく、品質の高い商品がお買い得 という店に殺到するのです。言い換えれば、自分の欲しい商品が納得する価格で販売されていれば、 躊躇することなく、すぐに買い求めるのです。小売チェーンでは、ユニクロを展開するファースト リテイリングやニトリが圧倒的な強さを見せていますが、これらの企業に共通することは、単に 価格が安いというのではなく、品質に対して価格が割安であるという点です。言うは易し、行うは 難しですが、消費者にとってのコストパフォーマンスを高めるための努力を一生懸命にしたかどう かで、小売チェーンの勝敗が決まるのだと、断言してよいでしょう。
ファーストリテイリングの柳井社長の話によると、ユニクロもSPA(=Speciality store retailer of Private label Apparel)すなわち製造小売業を完成させる前は、既存の商品を仕入れて売っていた ので、安く売るためには、どちらかというと安かろう悪かろうという傾向が強かったそうです。
しかし、販売量が多くなり、製造まで踏み込むようになってからは、急速に品質をよくするように改善 できたとのことです。つまり、コストパフォーマンスを高めるためにはステップがあり、まず低価格で 大量販売を実現して、それから徐々に品質を高めていくというのが、王道のようです。ちなみに、那須 ガーデンアウトレットでは、SPAの元祖であるギャップの商品が、よく売れていました。
それでは、ナショナルブランドが強い家電製品や一般用医薬品などの販売で、消費者のコストパフォー マンスを高めるためには、どうすればよいのでしょうか。ナショナルブランドに関しては、どこで購入 してもまったく同じ商品なのですから、売価を低くすることによってしか消費者のコストパフォーマン スを高めることはできないのです。したがって、企業努力で販管費をどれだけ下げられるかが、唯一の 勝敗ポイントとなることは明確です。この戦いを避けるためには、PB開発に活路を求めることになり ます。特に独自の機能や効用がある製品を販売できれば、競合店と差別化を図ることが可能です。
那須ガーデンアウトレットには、スーパーマーケットもあり、そこには地元の農家が自らの名前を掲げて 持ち寄った新鮮な野菜がたくさん売られていました。価格はとても安くて、新鮮でおいしい野菜です。 首都圏のGMSなどでもでも産地や生産者の名前入の野菜が売られていますが、正直なところ、そんな表示 がなかった頃の野菜と味はほとんど変わらないのに、価格だけが高くなったという店が多いのが実態です。 地元の新鮮な野菜を食べながら、昨今の価格競争の中で、本当に消費者のコストパフォーマンスを高めよう としているのか、形だけそのような素振りをしているのか、賢い消費者は企業姿勢を簡単に見破るのでは ないかと、考えていました。