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在宅医療や介護事業への取り組みはドラッグストアの重要な使命だ

「在宅医療や介護事業への取り組みはドラッグストアの重要な使命だ」

2009年6月

最近、在宅医療や介護事業等に先進的に取り組んでいる大手ドラッグストアチェーンの、複数の 経営者から、直接同じような発言を聞きました。それは、現段階では「在宅医療や介護事業は赤字 だが、社会的な使命のために、全力を挙げて取り組まなければならない」という主旨の発言です。 改正薬事法が施行され、競争が激化している中、いずれの経営者も、在宅医療や介護事業に対して、 相当な覚悟を持って臨むとの強い意志が伝わってくるような真剣な発言でした。

いずれも東証一部上場企業の経営者ですから、株主に対して、業績を高めて配当する責任と義務を 負っています。それにもかかわらず、赤字部門を容認する発言ですから、かなりの覚悟がなければ 言えないことです。このような発言の背景には、これまでの企業経営で、きっちりと利益をあげて きた実績があることと、在宅医療や介護事業は、地道に取り組んでいれば、将来は必ず黒字化でき るという自信があるからだと思います。そして、在宅医療や介護事業を当面赤字でも、社会のため に継続させるには、ドラッグストアの物販部門で、それを賄うだけの利益をあげ続けなければなら ないということも強調していました。

日本でも、企業経営においてCSRが重視されるようになりました。CSRとは、英語の頭文字を 略したもので、Corporate Social Responsibility が正確な用語です。日本語では、「企業の 社会的責任」と訳されています。もう少し具体的に言うと、CSRとは、持続可能な社会を創るた めに企業が果たすべき責任という意味になります。「企業の法令順守」を意味するコンプライアン スと同義語として使われることもありますが、CSRは、本来はコンプライアンスよりも広範囲な 概念であると考えられます。

某ドラッグストアから、ドラッグストアでは初めてクールアース・デーに参加するという発表があ りました。クールアース・デーとは、G8サミットが2008年7月7日の七夕の日に開催された ことをきっかけに、天の川をみながら地球環境の大切さを国民全体で再確認し、年に一度、低炭素 社会への歩みを実感するとともに、家庭や職場における取組を推進するための日として毎年7月7日 (七夕の日)に設置された記念日です。具体的には、環境省で2003年より地球温暖化防止のた めライトアップ施設の消灯を呼び掛ける「CO2削減/ライトダウンキャンペーン」を毎年夏至の 日を中心として行ってきましたが、これを発展させて、夏至の日と七夕の日に夜8時から10時ま での2時間、ライトアップをやめるという活動を実施します。これも広義のCRSの一環です。

クールアース・デーへの参加のように、誰でも簡単な努力で実施できる活動も、CSRの第一歩と なります。企業によっては、利益の一部で植林をしたり、アフリカに水を提供したり、社員のボラ ンティア活動への参加を支援したりと、さまざまな取り組みがなされています。これらも、もちろ ん大切なことですが、何よりも重要なことは、本業で真正面から社会貢献に取り組むことではない でしょうか。ドラッグストアにとっては、在宅医療や介護事業への取り組みは、まさに地域医療の 一端を担うという意味で、最も大きな社会貢献になるはずです。

ドラッグストアの生き残り策として、調剤併設を推進する企業が増えてきていますが、単に改正薬 事法施行による異業態との差別化の手段の1つとして取り組むだけなのか、真剣に地域医療の一端 を担うという経営理念のもとに取り組むのかで、見た目は似ていても、内容はまったく異なります。 目の前は苦しくても、経営者の意向を全社員に浸透させることにより、全社員が使命感とプライド を持って、日々の仕事に取り組むことのできる企業が、将来的に勝ち残ると思います。

それに対して、既に撤退したカルフールなどは、本来の業態の強みである圧倒的な安さが、日本では まったく見られなかったのですから、支持されなかったのも当然です。ウォルマートでさえ、西友が 本当の意味での低価格戦略に舵を切ったのは、ごく最近のことであり、それまでは特別な安さを感じ ない、ごく普通のスーパーだったのですから、売上が伸びなかったのも当然です。オフィス・デポの 店舗販売からの撤退も、国内のオフィス用品の通信販売業者との価格競争に敗れたことが原因です。 日本の家賃や人件費の高さが、欧米における事業とは異なるオペレーションを強いられるために、苦心 したことは否めませんが、それを乗り越える日本でのイノベーションがなかったこともまた事実です。

日本においては、眠れる獅子であったウォルマートが、やっと目を覚ました感があります。迎え撃つ イオンやセブン&アイなど、日本の大手小売チェーンも、急速に価格戦略に舵を切っていますし、 ベイシア、トライアル、オーケーなど、日本型のローコストオペレーションを確立して、圧倒的な低価格 で業績を伸ばしている企業がある中で、西友が既存店中心の店舗で、どれだけ戦えるのか。ウォルマート 流の新業態店を新たに展開できるのかどうか、大変興味があります。価格軸だけがすべてではありません が、低価格を強みとする業態を展開するのであれば、圧倒的な低価格でコストパフォーマンスの高さを 提供しなければ、勝ち残ることはできません。戦っている当事者達はそれぞれがベストを尽くしている と考えているはずですが、消費者にとってはまだ不満だらけで、コンサルタントの眼から見ると、改善 の余地が大きいように思います。

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