「ホールディングスの課題である組織膨張から脱却せよ」
2012年2月
時代の変化を反映して、当社のクライアントの中に占めるホールディングスの比率が、次第に高 まってきました。ホールディングスに経営コンサルタントとして向き合って見て、大きな課題を抱え ていることが分かります。ひとことで言えば、組織が膨張して、意思決定のプロセスが錯綜してい ることです。経営者の意志がなかなか、現場まで到達しないという歯がゆさを感じます。取引先 なども困惑しており、辛辣な批判が出ていることも多いです。
日本では、戦前の財閥本社が純粋持株会社の形態を採っていたのですが、戦後に制定された 独禁止法によって、純粋持株会社たる会社の設立及び既存の会社の純粋持株会社化が禁止さ れたという経緯があります。その後、金融ビッグバンの一環として、1997年に同法改正によって 純粋持株会社が解禁されました。純粋持ち株会社というからには、純粋でない持株会社もある わけです。基礎知識としてその辺りから説明していきましょう。
持株会社とは、経営権を握る目的で、他社の株式を所有する会社のことを意味します。通常は、 持株会社のことを親会社、株式を保有される他社のことを子会社と呼びます。持株会社には、
事業持株会社と純粋持株会社があります。事業持株会社とは、本業を行うかたわら、他社の事 業活動を支配する会社のことをいいます。これは、以前から認められていました。一方、純粋持 株会社とは、本業を持たずに、他社の事業活動を支配する会社のことです。
純粋持株会社による統合は、通常の合併や吸収などによる統合と違い、子会社となる企業同士 には何の上下関係も生まれません。同じグループとなりますが、実質的にはあくまでも別会社の ままです。そのために、特に創業意識が色濃く残り、独立性の強い日本企業がM&Aなどにより 経営統合するには最適ということで、純粋持株会社すなわちホールディングスによる経営統合 が急激に進められてきました。
事業の目的は顧客創造であって、それを追求していくと、企業の目的はシェア拡大になります。 それゆえ、最終的な局面では、どのような業界も、上位数社による寡占状態となるのです。その ため、まだ上位寡占が不完全な業界では、急速に企業規模を拡大するために、各企業の面子を 保ったままで、本当の意味での統合という高い壁を簡単にクリアできる、ホールディングスという 形態による手法に飛びついたという経営者の気持ちは十分に理解できます。
重要なことは、ホールディングスという組織形態は、本格的な経営統合に向けての1つのプロセ スであるという自覚を持つことです。M&Aなどへの抵抗を排除するために、ホールディングスと うプロセスを通ることには、それなりの意味があると思いますが、名目的な統合が完了した後に は、いち早く組織を再編成して、実質的な組織の一本化に向けて邁進することです。情報システ ムの統一、人事管理の統一などに取り組み、子会社間の人事交流を図り、できるだけ早いタイミ ングで、名目的なホールディングスを脱皮して、経営者の意志が末端までスピーディーかつスト レートに伝わる実質的な統合会社に変貌させなければなりません。