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チェーンストアはDXを道具として使いこなすべきである

チェーンストアはDXを道具として使いこなすべきである

チェーンストアの経営者の中には、我が社はDX戦略に後れを取っているのではないかと、あせりを感じている人が多いのではないでしょうか。

DX戦略という用語が一人歩きして、これまでの経営戦略を破棄して、何かまったく新しい戦略を構築しなければならないような強迫観念に襲われている経営者もいるかもしれません。

はっきり言って、これは間違いです。DX戦略は魔法の杖かのように語る、外部のDX戦略の専門家と称する人たちの餌食にならないように、十分に注意を払うことが大切です。

結論から申し上げると、チェーンストアの経営者は、自らの考える経営戦略を実現するための便利な道具として、DXを使いこなすという感覚を持つべきです。それが適切なDXへの向き合い方だと考えます。

DXとは何か

DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語です。トランスフォーメーションは「変革、変容」などの意味なので、DXとはデジタル化によって、ビジネスを変革させるという意味です。

DXは、「単なるIT技術というツールを使ったデジタル化ではない」と強調する人が多いのですが、これは大きな誤解を与える言い方だと思います。確かに、これまでやっていたことをデジタル化するための道具というだけではないことは確かです。

DXは、経営者がこれまでやりたかったことをデジタル化により効率的に実現するための道具だと考えます。つまり、自らの事業においてやりたいことを考えるのは経営者であり、それを形に描いたのが経営戦略です。

DX自体は、戦略というほど大げさなものではなく、あくまでも経営者のアイデア(経営戦略)を実現するための道具として位置づけるのが正しい考え方だと思います。

チェーンストアがDXを活用すべき5つの分野

やや回りくどい言い方をしましたが、DXは道具だという意味はご理解いただけたと思います。それでは、経営コンサルタントから見て、多くのチェーンストアの経営者がいまやりたいこと、やるべきことは何か?

それに対してDXはどう役立つのか?という観点から、チェーンストアがDXを活用すべき5つの分野について解説します。

OMOの実現

OMOとは、Online Merges with Offline の略語です。オンライン(ECなど)とオフライン(店舗など)の融合という意味です。OMOは、Googleチャイナの元CEO李開復氏が、2017年頃に提唱した概念です。

チェーンストアは多店舗展開していますから、ECで購入した商品を店舗で受け取れることが強みです。店舗への物流体制は既に構築されているので、無料でお客様にお渡しすることができます。

そして、例えば、ユニクロやGUでは、最初の頃はECで購入した商品を店舗で受け取るときには、準備が整ったという連絡メールを提示しなければならなかったのが、今はスマホで会員証を提示するだけでOKになっています。

このように、少しでも円滑に商品のやり取りができるようにするのに、DXは多いに役立っています。今後さらに進化すると思われます。

店舗運営の効率化

チェーンストアは業態にもよりますが、巨大店舗も多く、取扱商品のアイテム数や在庫数は膨大になります。DXを導入することで、AIを活用して自動発注の精度を高めることができて、在庫管理の適正化が図れます。

また、店内に自動カメラを多数設置して、そこで撮影した来店客の動線を分析して、商品レイアウトや棚割り改善に生かすという取り組みも始まっています。

さらに、店舗における買い物に関しても、無人レジや、カートにスマホやタブレットを取り付けて、顧客に合った情報やクーポンを提供するなども可能となっています。一部では、無人店舗の開発も進められています。

マーケティングへの活用

オンライン、オフラインを問わず、顧客情報や購買情報をトータル的に収集できるようになります。そして、このようなデータを分析して活用することで、様々なマーケティング活動に生かせるようになります。

例えば、店舗では、商圏内の顧客分布をマッピングできるようになります。弱いエリアに集中的に販促を仕掛けることができるでしょう。また、デジタルを活用して、会員個々に応じた販促提案をすることも可能になります。

商圏特性に応じた品揃えや陳列・演出方法なども、AIが教えてくれるようになるでしょう。チェーンストアの強みを生かしながらも個々の店の特徴を出していくという新たなチェーンストア創りに役立つはずです。

ロジスティックスの効率化

DXの活用の場は、店舗だけではありません。店舗を支える物流においても、活用することができます。購買数および入出庫のデータ分析により、物流在庫の適正化が図れます。

また、ロボットに作業をさせることにより、人手不足が解消して人為的なミスもなくすことができます。床に描かれたQRコードを読み取りながらロボットが商品をピックアップしている姿は、少し前のSF映画のようです。

DXにより、自社の範疇だけでなく、サプライチェーンを構成する各社で情報を共有化することにより、サプライチェーン全体の効率化や最適化を図ることも可能になります。

さらに、今後はドローンを活用した配送も進化していくと思われます。

後方業務すべての効率化

チェーンストアでは、後方業務と呼ばれる、いわゆる総務、人事、会計など、ほぼすべての間接業務が、DXの導入によって、効率化が図れます。これらの分野は、他業界とかなり共通している部分です。

チェーンストアでは、これまで店舗人員を必要以上に減らしたり、現場での効率化を図ることにやっきになっていましたが、今後は間接業務の効率化にも、より一層注力していく必要があります。

以上、主な5つの分野においてDXの活用例をご説明しました。繰り返しになりますが、重要なことなので、最後にもう一度、申し上げておきたいと思います。DX戦略という特別な戦略があるわけではありません。

あくまでも、経営者がやりたいと思う戦略を効率的に実現するための道具として、DXがあるのです。この点をぜひ念頭に置いておいていただきたいと思います。

アクティブ・コンサルティングでは、1999年の創業以来、一貫して経営者がやりたいこと、やるべきことを明確化するための、経営戦略の策定および、その遂行に関するコンサルティングを行ってきました。

道具は時代と共に新しい道具に変化しますが、チェーンストアの経営戦略の本質は不変です。くれぐれも目新しい道具に振り回されて、本質を見失わないようにしてください。

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