業態の壁を超える

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業態を超えて、共通商品の価格競争が激化する

「業態を超えて、共通商品の価格競争が激化する」

2008年12月

日本でもスーパーセンター業態が急速に成長しています。特に、トライアルスーパーセンター (福岡県 08年3月期売上高1514億円)は、注目すべき企業です。2001年の売上高は、わずか113 億円でしたので、7年間で10倍以上に拡大したことになります。ただ売上が伸びているだけではあ りません。情報システム、物流システムなどを整備した素晴らしいマネジメント能力のある企業です。 (詳細は販売革新11月号の記事を参照して下さい。)トライアルスーパーセンターの魅力は、品揃え の豊富さと、圧倒的な価格の安さです。

その一方では、日本の専門店で最大規模を誇るヤマダ電機 (群馬県 08年3月期売上高1兆7678億円)が、 取扱商品の幅を拡大しています。スタートは、2008年7月に、JR高崎駅前に開設した「LABI 1高崎」です。地下1階に非家電の売場を設置して、そこに一般医薬品、飲料、加工食品、酒類、日用 雑貨などを取り揃えました。今後は家電売場を従来の70%程度に抑えて、非家電の売場を導入していく という方針が語られています。現段階では都市型のLABI に導入されていますが、今後は郊外型のテッ クランドを中心に、積極展開していくことが予測されます。

ヤマダ電機は家電専門店ですから、大型家電製品は主力商品です。それに対して、トライアルスーパーセン ターはコモディティグッズが主体ですから、低価格の小型家電製品までしか扱わないというコンセプ トを守っています。このように、業態の違いはあるのですが、今後は一般医薬品、飲料、加工食品、 酒類、日用雑貨など共通して取り扱う商品に関しては、業態を超えて、品揃えと価格を競うことにな ります。どちらも優れた企業なので、激しい戦いになると思います。

1995年の新食糧法の改正により米が、2003年の酒類販売の実質自由化により酒類が、自由に 販売できるようになったのですが、改正薬事法の施行を機会に、スーパーセンター、家電店、ホーム センター、ディスカウントストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどが雪崩を打って 一般医薬品に参入してくると予測されます。

原則すべての規制を撤廃し、完全に自由競争にすることが、価格競争を活発にして、消費者のメリット になることは明らかです。産地や使用法など情報公開さえ義務付ければ、消費者は賢いのですから、 情報を見て、自ら良品と悪品を選別し、コストパフォーマンスの高い商品を自由に選んで購入して、 正しい使い方をするのです。規制緩和が実施されることにより、小売チェーンの競争が、本来 あるべき「品揃えと価格」の戦いに純化していくのです。

誰でも自由に何でも販売できるようになって初めて本格的な戦いが開始します。消費者の 視点から見て、何を取り扱えばよいのか明確に決めること。そして、ローコストオペレーションに徹して、 出来る限り低価格で販売すること。そのためには、知恵と努力で仕組みを創ることが必要です。そして、 「品揃えと価格」で優位性を築いた企業が勝ち残ります。既得権益を一切認めず、公正なルールで戦えば、 極めてシンプルに勝敗は決まるのです。ただし、規模が大きくて何でも取り揃えるから勝てるということを 意味しているのではありません。規模の大小にかかわらず、消費者ニーズにフォーカスし、コンセプトを 明確にして知恵を絞った企業が勝ち残るのです。

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