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改正薬事法に対応するドラッグ売場に異業態の参入が相次ぐ

「改正薬事法に対応するドラッグ売場に異業態の参入が相次ぐ」

2009年4月

セブン&アイ・ホールディングスとアインファーマシーズが、2009年5月に共同出資会社を 設立するという情報が公開されました。新会社の資本の半分以上は、セブン&アイ・ホールディングス が保有するということです。この新会社は、イトーヨーカ堂が一部の店舗で展開中の医薬品販売 部門と、アインファーマシーズが展開中のドラッグストア約10店を継承します。今後は年間約30 店ベースで新規出店し、年間売上高約600億円を2年間で1000億円に拡大する計画が立てら れています。いよいよセブン&アイ・ホールディングスの本格的なドラッグストアへの参入です。

これにより、既存のドラッグストアの多くは、今後より大きな流通再編の中に組み込まれて、 最終的には、セブン&アイ・ホールディングスとイオン・ウエルシアストアーズの2大巨頭の一騎打ち となる構図が見えてきました。そして、その裏には商社の影が見え隠れします。セブン&アイ・ホール ディングスと、イオン・ウエルシアストアーズが真正面からぶつかり合うことにより、両者が開発 する一般用医薬品のPBと、食品や日用雑貨のPBによる価格競争も、ますます激化して、ドラ ッグストア業界も、資本の論理による体力消耗戦に突入することになるでしょう。その中で、専門性の 高い独立系のドラッグストアが、独自のポジションを確立できることを期待しています。

異業態からの参入は、セブン&アイ・ホールディングスだけではありません。日本の専門店チェーン最大 規模のヤマダ電機も、改正薬事法の施行を機会に、ドラッグ売場に本格参入の構えを見せています。 ヤマダ電機の2008年3月期決算の売上高は1兆7678億円であり、これはドラッグストア 最大規模のマツモトキヨシホールディングスの約4.5倍です。2009年2月末時点の店舗数は、 ヤマダ電機単体で384店舗、子会社やFC店を加えると1428店舗となります。すでにほぼ 全国を網羅したナショナルチェーンを確立しているのです。

ヤマダ電機の最新プロトタイプの店舗を視察したところ、本業の家電売場以外に、一般用医薬品、 化粧品、日用雑貨、食品、家庭雑貨などを組合せたドラッグ売場、CD、DVD、ゲームなど を組み合わせたソフト売場、玩具売場、書籍売場などをワンフロアで展開する形態となっていました。 これは直営でミニショッピングセンターを形成することにより、来店頻度を高め、女性客を増やそう という戦略です。そして、ポイントで家電製品以外のものも購入できるようにすることにより、 顧客の囲い込みを強化しようという狙いが明確です。その大きな柱としてドラッグ売場が位置 づけられているのです。集客が目的ですから強力な価格競争を仕掛けてくると思われます。

スーパーマーケットでは、ライフコーポレーションがドラッグ売場への参入に熱心です。すでに、 45店舗にドラッグ売場を導入しており、2010年以降の新店には原則として、ドラッグ売場を 設置する方針を表明しています。登録販売者も、100人強の社員に取得させています。改正薬事法 に対応したドラッグ売場を、新たに設置した店舗を視察したところ、壁面の医薬品売場の一角にオーラ ルコーナーを設置して、第2類に分類される歯周病予防歯磨きを並べるなどの工夫が見られました。 売場面積も従来のスーパーマーケット内の店舗よりかなり拡張されていました。

異業態から参入した店舗を視察した印象を率直に述べると、コンサルタントの眼から見て、いずれも 課題が山積しているというのが実態です。まだ改正薬事法施行前なので実験段階なのかもしれませんが、 現状のままでは競争に勝ち残るのは難しいでしょう。ただし、いずれも本業では超優良企業ですから、 いずれは力を付けてくる可能性があります。このタイムラグがある間に、ドラッグストアが顧客の 信頼を強固なものにできるかどうかが問われていると思います。最終的にはどのような業態で あっても、消費者が支持する企業が勝ち残るのですから。

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