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調剤薬局はマーケティングを重視した経営をせよ

「調剤薬局はマーケティングを重視した経営をせよ」

2010年7月

医薬品流通専門誌である「ドラッグマガジン」という雑誌に、5月号から「調剤薬局 経営難克服 への手引き」というタイトルで、連載をさせていただいております。その関係もあり、調剤関連の 皆様を対象とした講演依頼や、調剤薬局からのコンサルタントの依頼が増えております。これま では、医薬品業界では、ドラッグストアを中心にコンサルティングを実施していました。ドラッグスト アでも調剤薬局を併設している店舗が多くあり、いろいろな形で調剤にも関わってきたのですが、 いよいよ本格的に調剤薬局チェーンをお手伝いする段階に来たように思います。

調剤薬局チェーンの現状分析をすると、マーケティングという概念が欠如しているのではないかと 思わざるをえないことが多いと感じています。その要因は、調剤薬局を担っているのは、薬剤師 という資格を持った人達だからではないかと思います。簡単に言うと、自分達の仕事はこうある べきだという独自の枠組みを作り上げて、なかなかそこから出てこないといった感じでしょうか。 すなわち、自分達が正しいと思ったことをやるのが仕事で、患者様がそれを受け入れなければ、 患者様のレベルが低いからだという思考回路が根本にあるのではないかと思います。

マーケティングとは、ものごとのすべてを市場から発想することです。言い換えれば、ビジネスの あり方を消費者視点から組み立てることです。調剤薬局で言えば、患者様の視点、患者様が望 むことを起点にして、すべてのビジネスを組み立てるということになります。そのためには実際に 患者様が調剤薬局に対して、何を望んでいて、何が不満であり、どのように改善して欲しいかを、 率直に聞くことです。すなわち、患者様に対するアンケート調査や、グループインタビューが起点 にならなければなりません。

そして、そこから得られた患者様の要望に、できるだけ応えるという姿勢が重要です。調剤薬局 チェーンは、法的な規制に守られている業態ですから、今まではマーケティングが不在でもやっ てこれたのです。極端な言い方をすれば、大病院の前の優良な立地を手にいれさえすれば、誰 がやっても一定の成功を収めることができたのです。しかし、異業種で法的規制に守られていた 業界が、法的規制が緩和した途端に崩壊した事例が数多くあります。調剤薬局業界も、いつま でも従来のやり方が通用するとは思えません。

ドラッグストアの経営者にも薬剤師は多いのですが、いずれも卓越した経営感覚やマーケティン グ感覚を持っています。そして、部下に対しても、マネジメントやマーケティングの研修を積み重 ねてきました。調剤薬局の経営者にも優秀な人材は多いと思いますが、企業内のすべての薬 剤師にマネジメントやマーケティングを徹底的に指導するという点では、ほとんどできていないの が実情です。だからこそ、未だに思考がやや偏った薬剤師が多く存在する段階から脱出するこ とができないのでしょう。

経営コンサルティングは、クライアントの経営者との信頼関係をベースにして、企業にとっては、 厳しい改革も推し進めなければならない仕事です。そのために、部分的なお手伝いを希望され る調剤薬局に対しては、コンサルティングをお断りするケースもあります。経営者自らが先頭に 立って、リーダーシップを発揮して、従業員の意識改革を図ることが大切です。経営コンサルタ ントとしても、このような調剤薬局チェーンに対して、長期的な視点から繁栄のサポートをしてい きたいと考えております。

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